【皇室典範改正】女性皇族は今後結婚できるのか?身分保持案の問題点を考える【皇族数確保】

女性皇族の身分保持案

皇族数確保に関する皇室典範改正法案が令和8年(2026)6月30日に閣議決定されました。
同日の共同通信の報道によると、宮内庁側近は困惑し、以下のように話しているとのことです。

「関連する法改正により、女性皇族は天皇や皇族以外と婚姻した場合、皇室にとどまりながら、住民基本台帳にも記録される。側近は『制度がいびつで、結婚を踏みとどまってしまう皇族もいらっしゃるのではないか』と懸念を示した。」

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婚姻後も女性皇族はそのまま皇族として残ることとなりますが、その生活については一般国民の制度にも接続されることになり、これは、皇族と国民の中間のような、これまでにない制度設計であり明らかに「ねじれ」があります。
そしてその結果、「結婚を踏みとどまってしまう皇族」が出て、さらに一般男性側も女性皇族との結婚を踏みとどまる原因を作ってしまうことになりかねません。

今回は、なぜこのような制度設計になっているのか、さらに女性皇族身分保持案が抱える問題点について見ていこうと思います。


現行制度では女性皇族は婚姻後、皇室を離れることになっている

現行皇室典範では、女性皇族は一般国民との婚姻と同時に皇籍を離脱することとなっています。

皇室典範第12条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。


女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案

女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案(以下「身分保持案」)は、この皇室典範12条を改正し、婚姻後も皇族の身分を保持することとしています。
なお、配偶者の男性と、その間に生まれた子の身分は一般国民のままです。

⭐️参考 皇室典範等の一部を改正する法律案要綱(参議院、PDF)


住基法適用と特例が示す制度上のねじれ

要綱には次のようにあります。

第4 住民基本台帳法の一部改正
天皇及び皇族以外の男子と婚姻をした内親王及び女王(当該男子と離婚又は死別した者を含む。)について住民基本台帳法を適用するものとし、同法及び電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の規定の適用については、政令で特例を定めることができるものする。

皇室典範等の一部を改正する法律案要綱(参議院、PDF)

住民基本台帳とは、市区町村が住民の氏名・住所・生年月日・性別などを記録し、住所証明や各種の行政手続の基礎とする制度です。現在では住基ネットやマイナンバー制度とも結びつき、行政上の本人確認の基盤にもなっています。

その制度を、皇族の身分を保持する女性皇族に適用するということは、女性皇族を皇族のまま、一般国民側の行政制度に接続することを意味します。ここに、身分保持案の中間的で複雑な性格が表れています。

なぜ住基法を適用することにしたのか?

なぜ住民基本台帳法を適用するのか?
おそらくこれは、女性皇族が身分を保持したまま、一般国民である夫や子と家庭生活を営むには住所、世帯、本人確認、各種行政手続を処理するには、住民基本台帳制度に接続せざるを得ないためです。

しかし、皇族の身分を保持する以上、完全な一般国民として扱うこともできない。そのため、住民基本台帳法を適用しつつ、政令で特例を置くというねじれの避けられない制度設計になっているのではないでしょうか。

「皇統譜」と「戸籍・住民票」が同じ家庭内で分かれる

政府は、皇族は皇統譜に身分事項が登録されるため戸籍法を適用する必要はない一方、配偶者・子は皇族ではないため戸籍に登録する必要がある、という整理しています。

⭐️参考 事務局における制度的、歴史的観点等からの調査・研究(内閣府、PDF)

同じ家庭でありながら、妻は皇統譜、夫と子は戸籍という別々の身分登録制度に置かれることになります。これは、夫婦・親子という最も基本的な家族関係を、2つの制度にまたがって処理しなければならないことを意味します。


女性皇族は今後本当に結婚できるのか

もともと難しかった女性皇族の結婚

女性皇族の結婚は、もともと容易なものではありません。
皇族というお立場上、自然な出会いの機会は限られ、結婚相手となる男性やその家族にも大きな社会的注目が集まります。実際、眞子内親王殿下(現在:小室眞子さん)のご結婚では過熱報道やSNSでの炎上などが起き、その結果関連儀式が行われず、一時金も支給されないという異例の形となりました。

女性皇族の結婚は、本人同士の意思だけで完結するものではなく、報道、世論、相手方の家族、皇室制度そのものと深く関わる問題です。

より難しくなる女性皇族の結婚

そこへ今回の身分保持案が加わります。
従来は、女性皇族が天皇・皇族以外の男性と婚姻した場合、皇族の身分を離れるという整理でした。これは皇族数減少の原因である一方、結婚後は夫婦ともに一般国民として家庭を築くという明確な道筋でもありました。

しかし身分保持案では、女性皇族本人は婚姻後も皇族にとどまり、夫や子は一般国民にとどまることになります。つまり、従来から難しかった女性皇族の結婚に、「妻は皇族、夫と子は国民」という新たな制度上の難しさが加わることになります。

今でこそ眞子さんは一般国民として生活されていますが、身分保持案法制化後の女性皇族の結婚は、ご結婚後も公人であり続け、配偶者も「半公人」のような立場に立たされ続ける以上、社会の注目の中で生活していかなければならないでしょう。

このような難しさがある以上、身分保持案が法制化された後、本当に結婚される女性皇族の方がおられるのか、または女性皇族との結婚を決意される一般男性が本当に現れるのかについてはまったくの見通し不明としか言いようがありません。

結婚するためのハードルがあまりに高いと言えます。


まとめ 従来の制度が一番穏当だったのでは?

この身分保持案は「皇族数を確保するため皇室に残っていただく」という案です。
かなり強く言えば、女性皇族が結婚するのか・しないのか、またはできるか・できないかについては「皇族数確保」とは関係がありません。ただ女性皇族が結婚しても皇室に留まらせるという案であり、そこには当事者の事情に思いを致しているとは感じられません。

要綱では経過措置として、現在の女性皇族については従来通り「婚姻と同時に皇族の身分を離れようとするときは、皇室会議の議によることなく、その意思により皇族の身分を離れることができるものとし、当該婚姻について皇室会議の議を経ることは要しないものとする

とあり、一定の配慮をしているように見えますが、意思により婚姻と同時に皇族の身分を離れた場合「せっかく制度を整えたのに結局皇室を離れるのか」「何のために制度を作ったのか」という批判と、「皇族数確保」という期待に応えなければならないというプレッシャーからは逃れられません。権利が与えられても、その行使は難しいと言えるでしょう。

従来通り、女性皇族は婚姻と同時に皇族の身分を離れることが最も明確で穏当だったのではないでしょうか。

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