女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案
令和8年(2026)6月30日に、皇室典範の改正案が閣議決定され、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案(以下「身分保持案」)が法制化される見通しです。
⭐️参考 皇室典範等の一部を改正する法律案要綱(参議院、PDF)
配偶者と子は一般国民のまま
身分保持案は、以前から女性皇族の配偶者と子の身分をどうするのか、すなわち皇族とすべきなのか、それとも一般国民のままとするのかが大きな争点となっていましたが、今のところ、配偶者と子は一般国民のままと整理されるようです。
多くの問題点を抱えたまま法制化へ
皇族は身分そのものが公的なもので、制度上も人権上も生活の上で様々な制約があります。その皇族が一般国民と同じ家庭で生活を送ることができるのかは以前から疑問視されてきました。
たとえば、女性皇族がその品位を保つための費用として国から皇族費が支給されていますが、これは女性皇族個人へのものとして成立するのでしょうか。
家庭内で家計を完全に切り離すということは難しく、間接的に一般国民たる夫と子にも皇族費が支給されているような状況になる恐れがあり、結局配偶者と子は事実上「準皇族」のような特権を得ることになりかねません。
ほか、解決が困難と思われる問題として夫婦「別姓」、母子「別姓」問題があります。
つまり、夫と子だけが姓を持ち女性皇族は無姓のままという問題です。
今回はこちらを掘り下げていこうと思います。
前提:皇族にはそもそも「姓」がない
まず確認しておくべきことは、皇族には一般国民のような姓(または氏、苗字)が存在しないという点です。愛子内親王殿下は「敬宮愛子」、佳子内親王殿下は「秋篠宮佳子」などと表記・呼称されることがありますが、これらはいずれも姓ではありません。
したがって、この問題を「夫婦別姓」「母子別姓」と呼ぶことは正確ではありません。しかし、「姓を持つ夫と子」、「姓を持たない妻(母)」という構図は夫婦別姓、親子別姓問題と共通点が多いです。
さらにこの問題は「選択的」夫婦別姓ではなく、制度上「強制」です。
女性皇族と配偶者がお互いにその身分を保持するということは、女性皇族が姓を持つことも、国民である夫が無姓になることも許されないからです。同様に子も国民として生まれる以上、強制的に父親の姓を名乗ることになるはずです。
女性皇族が身分を保持することにより、母子が同じ姓を共有しない状態になります。
母が皇族、子が一般国民という不自然さ
この制度で特に不自然なのは、子の立場です。
子から見れば、母は皇族です。しかし自分自身は皇族ではなく、一般国民として戸籍に登録されることになります。
母は公的な身分として皇族であり、皇族費の支給対象にもなり、公務を担う可能性があります。一方で、子は一般国民です。
しかし実際の家庭生活において、母の皇族としての地位と、子の一般国民としての地位を完全に切り分けることはできるのでしょうか。子は、母が皇族である以上、社会的には「皇族の子」として見られる可能性が高いでしょう。制度上は一般国民でありながら、実態としては皇室に近い存在として扱われる。ここに大きなねじれが生じます。
これは、家族として極めて不自然な状態です。
日本史上、少なくとも近代以降、皇族と一般国民が独立してひとつの家庭を築き、公私を両立させながら生活を共にしてきた例はおそらくありません。
「皇族数確保」を理由にして、これまで誰も経験したことのない新制度を実現させたとして、果たして上手く機能するのでしょうか。
配偶者・子を皇族にしてもしなくても袋小路
では、この問題を解決するために、女性皇族の夫と子も皇族にすればよいのでしょうか。
しかし、これはこれで、より重大かつ致命的な問題を生みます。
女性皇族の夫を皇族とするなら、史上初めて父の系譜をさかのぼっても天皇にたどりつかない「皇統に属さない男性皇族」の誕生となり、まして、女性皇族との間に生まれた子に皇位継承資格を与えることとなれば、それは「女系継承」そのものです。
つまり、配偶者と子を皇族にしなければ、家庭内に皇族と一般国民が併存する無理がある制度になる。逆に、配偶者と子を皇族にすれば、女系皇族・女系継承への道を開きかねない。
身分保持案はどちらに転んでも袋小路に行き着く案です。
結局のところ、従来通り皇室典範第12条「女性皇族は婚姻と同時に皇族の身分を離れる」を維持することが最も穏当だったのではないでしょうか。
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