この記事でわかること
1 憲法2条の「皇位の世襲」は、皇位の血統原理を正面から認めている。
2 養子の対象を旧11宮家の男系男子に限定することは、単なる家柄による優遇ではなく、制度の目的に基づいた合理的な区別である。
これまでの記事
第1回目 「600年も離れているから血筋が遠い」論への反論記事
第2回目 「80年近く一般国民として生活してきた」論への反論記事
今回は最終回として、旧宮家養子案に対する3つ目の論点
「憲法14条(法の下の平等違反、門地差別)」論について反論していきたいと思います。
「憲法14条(法の下の平等違反、門地差別)」論
反対意見
宍戸常寿氏
旧宮家養子案の反対意見については、宍戸常寿氏が令和3年の有識者会議ヒアリングで、一般国民の中から皇統に属する男系男子を養子候補に限定するなら「門地による差別に該当するおそれ」があり、旧11宮家の男系男子に限定する場合も、皇統に属する男系男子である国民の間での差別問題が生じ得る、と指摘しています。
つまり、「皇統に属する男系男子」と「それ以外の全ての国民」を血統に基づいて分別し、養子の候補を限定することは差別であるということです。
さらに、国民の中に広く存在する「皇統に属する男系男子」の中から「旧宮家の男系男子」だけを抽出して養子の候補とすることもまた、差別にあたるものと指摘しています。
⭐️参考 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(第4回)議事の記録(内閣官房、PDF)
小池晃氏
また、日本共産党の小池晃氏は、旧宮家養子案は国民の理解と支持や安定性などの視点から問題があるとし、さらに、一般国民として生まれ育った人を、旧宮家の子孫だからと皇族にすることは「憲法14条1項が否定した『門地による差別』であるとして反対しています。
⭐️参考 憲法と国民総意に基づく議論を 皇位継承全体会議 小池氏求める(しんぶん赤旗)
門地差別とは
「門地」は、辞書的には「家柄」「門閥」という意味です。
憲法では第14条・法の下の平等規定においてその語が見えます。
日本国憲法 第14条第1項
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
つまり、門地差別の禁止は「この家柄の出身だから偉い」、「この血筋だからこの職業に就ける」、「旧華族・旧公家の子孫だから特別扱いする」または「この家の出身だから不利益を受ける」といった差別を禁止するものです。
前提 憲法はそもそも「皇位の世襲」を認めている
憲法第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
憲法は第2条で、皇位は「世襲」とし、正面から天皇とその皇位継承について「血統による原理」を認めています。
世襲について、平成17年の有識者会議報告書は「皇位の世襲の原則は、天皇の血統に属する者が皇位を継承することを定めたもの」としています。
また、同報告書は、昭和21年に金森徳次郎国務大臣が「私ガ天皇ト申シマシタノハ、血統ノ繋ガリノ中ニオイデニナル人」と憲法改正委員会で発言したことを引用しています。
⭐️参考 皇室典範に関する有識者会議 報告書 平成17年11月24日(国立国会図書館)
令和3年の有識者会議報告でも、憲法2条の「世襲」について、これを受けた皇室典範第1条が規定する「皇統に属する男系」を、「父方のみをたどることによって天皇と血統がつながること」としています。
⭐️参考 報告 令和3年12月22日「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(内閣官房、PDF)
以上のように、憲法第2条の世襲原則は、血統による継承を前提としていることが分かります。
つまり憲法自身が、皇位を「特定の血統」の選り分けによって継承することを許容していることになります。
天皇・皇族は平等原則の枠外にいる
一般国民である旧宮家男子を皇族の養子に迎えることもまた、血統の選別であることは確かであり、一見すると差別的であるように思われます。
しかし、見てきた通り、憲法自身が天皇・皇室を支え、存続させるためにその血統原理を許容しています。皇室典範第2条により、天皇に即位する資格を持つ皇族もまた、その血統原理の中にある存在です。
つまり、天皇・皇族は憲法14条の「法の下の平等」原則の外にある特殊な存在です。
皇族は優遇される特権身分ではなく、制度の担い手
天皇・皇族がこのような例外的な存在である理由は、天皇が憲法第1条に言う「日本国の象徴」であり「日本国民統合の象徴」であるためで、皇族は第2条の「世襲」制度を継続するため、または皇室そのものを維持する「皇族数確保」のためです。
つまり、一般国民の中から旧宮家に限定して皇族の養子とすることは、「栄誉」や単に「偉いから」といった特権的身分を与えることが目的ではありません。
憲法自身が血統原理を許容している以上、養子を「皇統に属する男系」に限定することは合理的であり、必然的であると言えます。よって、これは門地による差別とは異なるもの、またはその例外であると理解できます。
皇統に属する男系子孫の中での選別
皇統に属する男系子孫は旧宮家だけではなく、国民の中に広く存在すると見られます。
そのため、
皇統に属する男系の男子が広く国民の中にいるなら、なぜ旧11宮家の子孫だけを対象にするのか。これは男系子孫同士の間での門地差別ではないか。
という反論があります。
しかし、旧11宮家を対象とする基準は、単に「皇統に属する男系男子である」という血統上の事実だけではありません。
旧11宮家は昭和22年(1947)5月の新憲法・新皇室典範施行から、同10月の皇籍離脱までの間現実に皇族であった方々であり、皇位継承資格も有していました。短期間とはいえ、現行の憲法・皇室典範下で皇族であったという事実は重く見るべきでしょう。
したがって、旧宮家に限定することは、男系子孫一般の中から家柄の優劣によって選別するものではなく、現行憲法・現行皇室典範の制度上の連続性を基準とするものです。
そして、その目的はこれまで述べてきた通り、憲法2条の「皇位の世襲」を支える皇族数確保のためであり、旧宮家を名誉のある家柄として取り立てる「門地差別」に繋がるものではありません。
まとめ
旧宮家養子案は、確かに血筋、血統と直結する制度です。
しかし、そもそも憲法は皇位を「世襲」と定めています。
世襲である以上、皇室制度を考えるうえで、天皇の血統につながるかどうかを無視することはできません。
大切なのは、「血筋で区別しているから直ちに差別だ」と決めつけることではありません。その区別に、制度の目的から見て合理的な理由があるかどうかです。
旧宮家養子案の目的は、旧宮家の子孫を特別に優遇することではありません。皇位の世襲を将来にわたって安定させ、皇室を支える皇族の数を確保することにあります。
そのため、旧宮家の男系男子を養子の対象とすることは、皇室制度を維持するための合理的な区別であると考えます。


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