メディアやSNSでは「愛子天皇待望論」がよく取り沙汰されています。
以下の『女性自身』の7月12日記事では
「待望論が高まっている『愛子天皇』」
「『愛子天皇』を望む人々の声が届かないのはなぜなのか」
「『愛子さまのご即位を』……というあまたの国民の声」
といった表現があります。

今回は、このような「愛子天皇待望論」の実体や実態について考えていこうと思います。
愛子天皇待望論が「高まっている」とする根拠
世論調査の結果
各種世論調査の「女性天皇」の賛否を問うアンケート結果が賛成多数であることが「愛子天皇待望論」の主な根拠となっているようです。以下にその例を挙げます。
令和6年(2024)共同通信社
調査対象:全国の18歳以上の男女 3,000人
調査方法:郵送方式
返送総数:2,061件
有効回答数:1,966件
有効回答率:65.5%
返送されたものの、代理回答などにより除外された回答:95件
設問「あなたは女性皇族も皇位を継ぐ「女性天皇」を認めることに賛成ですか、反対ですか。」
結果は、
賛成:52%
どちらかといえば賛成:38%
どちらかといえば反対:6%
反対:3%
合計すると90%が賛成という結果です。
皇統が途絶えて「王朝交替」となり「天皇系図」が一変する可能性…「旧宮家養子縁組プラン」の致命的な欠陥(プレジデントオンライン)
令和元年(2019)9月 NHK放送文化研究所
対象:全国の男女2,790人
有効回答:1,539人
回答率:55.2%
設問は「女性が天皇になることを認めること」について、
結果は、
賛成:74%
反対:12%
皇室観「関心」「親しみ」「身近」が7割(nippon.com)
令和8年(2026)3月 毎日新聞
調査は、スマートフォンを対象とした「dサーベイ」で実施され、全国の18歳以上から無作為抽出して協力を依頼し、1,918人から有効回答を得たとのことです。
女性が天皇になることについて、
結果は、
賛成:61%
反対:9%
女性天皇「賛成」61% 「反対」9% 毎日新聞世論調査
【3月世論調査まとめ】高市内閣支持率、下落傾向も6割台を中心に維持(KSI政策ニュース.jp)
これらアンケート結果は確かに、いずれも「女性天皇」の実現について賛成多数としています。
これを受けて、メディアは「愛子天皇待望論が高まっている」と主張しているようです。
世論調査の結果は「愛子天皇」の賛否ではない
しかし、ここで1つ非常に重要な点を指摘しておきたいと思います。
それは、
各種世論調査は「女性天皇」の賛否を聞いているのであって「愛子さまの即位」を問うているのではないことです。
つまり、女性天皇一般を制度化することの賛否と、愛子天皇を認めることは違うということです。
また、女性皇族が天皇に即位することに賛成する人の中でも、その考え方についてはさまざまでしょう。例えば、女性天皇に賛成するとしても、
- 現在の継承順位を変えてまで実現させることではない
- 立皇嗣の礼を撤回してまで実現させることではない
- 悠仁親王殿下の次代以降に限って女性天皇を検討する
- 男子がいない場合にのみ女性の継承を認める
- 将来の制度としては賛成するが、愛子内親王殿下個人の即位は求めない
- 愛子内親王殿下ご本人のご意思を考え、即位を望まない
という人が当然含まれ得ます。
したがって、女性天皇賛成が8割 → 愛子天皇を望む国民が8割 とは導けません。
「愛子天皇」実現を問う世論調査は存在するのか
結論を言うと、「愛子さま」という特定の女性皇族の即位を希望することを問う、一般の国民を対象にした代表性のある世論調査はほぼ確認できませんでした。
ただし、『女性自身』が令和2年(2020)に実施したインスタグラム上でのアンケートでは、「将来、愛子さまに天皇に即位なさってほしいと思いますか」と質問し、「思う」が77.8%、207人だったとしています。
しかし回答者はわずかに合計266人であり、『女性自身』のインスタグラムを閲覧して自発的に回答した人たちに限られます。
また、このアンケートでは、「皇室典範(皇室に関する法律)を改正し、女性天皇を容認することに賛成ですか、反対ですか」という質問もされていますが、賛成は90.2%、240人です。
ここから、「女性天皇」を容認するからといって、必ずしも「愛子天皇」を容認する人が同数であるとは言えないことがわかります。
「愛子さまを天皇に!」本誌アンケートで77%が熱烈支持(女性自身)
設問の仕方で結果の数字は変わり得る
先述のように、女性天皇に賛成する人の中にも様々な意見があるため、愛子天皇を容認するかどうかを本当に問うのであれば、本来は次のような設問があるべきです。
①女性も天皇になれる制度に賛成か
②その制度を愛子さまの世代から適用することに賛成か
③現在の皇位継承順位を変更することに賛成か
④秋篠宮さま・悠仁さまよりも、愛子さまを優先することに賛成か
⑤すでに天皇陛下は秋篠宮さまが皇嗣であると宣明しているが、その上で愛子さまを優先することに賛成か
その上で、
⑥「実際に愛子さまの即位を希望するか」 を問うべきでしょう。
世論調査は設問次第で結果の数字が変わり得るもので、こういった一連の問いをしたとしたら「愛子天皇待望論」が本当に一大世論として存在しているのか、実際のところは不安定であると言えるでしょう。
まとめ 女性天皇への賛成を「愛子天皇」への賛成にすり替えている
各メディア記事の見出し
デイリー新潮は、記事の見出しで「「愛子天皇」支持は90%!」と銘打っています。ところが、記事本文では「女性天皇」を認めるべきとした世論調査結果にしか触れておらず、その上で「むろん、愛子さまを想定しての数字であり、「愛子天皇」待望論が多くの国民の間に醸成されていることがうかがえる。」と、何の証明もすることなく「女性天皇一般への賛成」を「愛子天皇賛成」へすり替えています。

文春オンラインでも、記事見出しで「8割以上の日本人が待望する“愛子天皇”」としつつ本文では「女性天皇」に賛成する回答が87%としています。

同じく文春オンラインより。見出しで「女性天皇賛成多数」としていますが、記事本文では「愛子天皇」を「国民の7割前後が支持し」たとしています。

実例として、メディアは女性天皇賛成を愛子天皇賛成に読み替えて、その上で「愛子天皇待望論」が大きな世論になっているとしています。
以上のことから考えると、メディアの唱える「世論の大多数が愛子さま即位を待望している」という「愛子天皇待望論」の存在は、ほとんどメディアが作り上げた「まやかし」と言えるのが実体・実態であろうと思われます。
「女性天皇の制度化について賛成が8割」という世論調査を「愛子さま即位について賛成が8割」とすり替え「愛子天皇賛成が国民の圧倒的多数を占める」とすること、ましてや「これこそが国民の総意である」などとするのは厳に慎むべきことなのではないでしょうか。



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