【入門編】皇太子とは?「皇嗣」との違いを皇室典範をもとに分かりやすく解説

皇室典範

1. 皇太子とは、皇嗣とは。2つの違いは何なのか?

皇太子と聞くと、多くの人は「次の天皇になる方」というイメージを持つのではないでしょうか。

その認識は正解です。
しかし、皇室典範において「皇太子」は、単に「次の天皇」を指す言葉ではありません。皇室典範第8条には次のように規定されています。

皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。

皇室典範 第2章「皇族」第8条より

非常に簡潔に書かれています。
つまり、皇太子とは「皇嗣」であり、かつ「天皇の皇子」である方を指します。

では、「皇嗣」とは何か。

そして、なぜ現在の秋篠宮皇嗣殿下は、皇位継承順位第1位でありながら「皇太子」ではなく「皇嗣」と呼ばれているのでしょうか。

この記事では、皇室典範の条文をもとに、皇太子の意味と、皇嗣との違いについて入門向けに整理していきます。


2. 皇嗣とは、皇位継承順位が第1位の皇族

皇室典範には、皇位継承順位、つまり次の天皇になる皇族の優先順位が規定されています。
なお、皇位継承資格は皇室典範第1条により「皇統に属する男系の男子」に限られているため、以下の説明もその前提で整理します。

皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一 皇長子(天皇の長男)
二 皇長孫(皇長子の長男、つまり天皇の孫)
三 その他の皇長子の子孫(皇長孫以外の皇長子の子孫)
四 皇次子(天皇の次男)及びその子孫
五 その他の皇子孫(天皇の三男以下とその子孫)
六 皇兄弟(天皇の兄弟)及びその子孫
七 皇伯叔父(天皇の伯父または叔父)及びその子孫

皇室典範 第1章「皇位継承」 第2条より 括弧内は筆者注記

この皇位継承順位の中で第1位となった皇族を「皇嗣」といいます。つまり、「次に皇位を継ぐ立場にある皇族」ということです。

そして、皇嗣が「天皇の皇子」であったときには、特に「皇太子」と呼ばれます。
なお、皇嗣が「天皇の孫」にあたるときには、「皇太孫」と呼ばれます。


3. 秋篠宮皇嗣殿下はなぜ皇太子ではないのか

令和元年(2019)5月1日、平成の皇太子であった徳仁親王殿下は天皇に即位されました。
それと同時に、秋篠宮文仁親王殿下は、先に挙げた皇室典範の規定により皇位継承順位第1位、すなわち「皇嗣」となりました。ただし、「皇太子」ではありません。

秋篠宮皇嗣殿下は、令和の天皇陛下の弟にあたられる「皇弟」であり、皇太子の要件である「皇嗣たる皇子」には当てはまりません。

秋篠宮皇嗣殿下は「皇太子の例による」

なお、皇嗣殿下の「皇嗣としての地位」については、平成の天皇陛下の譲位を実現させた「皇室典範特例法」に次のように規定されています。

(皇位継承後の皇嗣)
第五条 第二条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族(つまり、秋篠宮皇嗣殿下のこと)に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例による。

天皇の退位等に関する皇室典範特例法 第5条より

つまり皇嗣殿下は、皇太子そのものではないですが、皇室典範の規定において皇太子の扱いを受けることとされています。

そのため、後述する皇籍離脱や摂政就任順位などを考える場合には、単に「皇太子ではない皇嗣」として扱うのではなく、この特例法第5条もあわせて見る必要があります。


4. 皇太子と、皇太子以外の皇嗣。その他の違いについて

以下は補足的な内容になりますが、他にも皇太子と皇嗣には皇室典範上の扱いで異なる点がいくつかあります。なお、皇太孫については、ここでは皇太子に含めるものとして整理していきます。

皇太子は皇籍離脱ができない

① 年齢十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
② 親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。

皇室典範 第2章「皇族」 第11条より

一定の皇族は自らの「意思」または「やむを得ない特別の事由」により、皇室会議の決定を経て皇族の身分を離れることができます。

ただし、「皇太子及び皇太孫を除く」とあるように、皇太子はたとえ「やむを得ない特別の事由」があったとしても皇籍を離脱することができません。逆に言えば、「皇太子以外の皇嗣には皇籍を離脱する余地が制度上は残されている」ことになります。

皇太子は摂政の順位で特別に扱われる

 摂政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 内親王及び女王

皇室典範 第3章「摂政」 第17条より

摂政とは、天皇が未成年、または精神や身体の重患、ほか重大な事故があるため国事行為を行えない時、天皇に代わってこれを行う役職です。

皇室典範第17条は、摂政就任順位第1位は「皇嗣」ではなく「皇太子又は皇太孫」としています。この部分は「皇嗣」と書いても摂政の運用上変わりません。
つまり皇室典範は、天皇の国事行為を代行する摂政の重みと、皇太子という称号の持つ重みから、単なる皇嗣以上の「格」を与えているとも言えます。

成年年齢について

天皇、皇太子及び皇太孫の成年は、十八年とする。

皇室典範 第4章「成年、敬称、即位の礼、大喪の礼、皇統譜及び陵墓」 第22条より

 これは、天皇と皇太子の成年年齢を特別に18歳と定めたものですが、現在では民法の改正により全ての人の成年が18歳となっているため空文化している向きがあります。

 民法改正以前は、皇太子以外の皇嗣の成年は20歳でしたが、皇太子に限り18歳だったということです。これはまた皇室典範が「皇太子」を他の皇嗣に比べて重く扱っていることの表れでしょう。


まとめ

以上のように、皇太子とは単に「次の天皇になる方」を漠然と指す言葉ではありません。
皇室典範上は、皇嗣であり、かつ天皇の皇子である方を皇太子といいます。

一方、皇嗣とは皇位継承順位第1位の皇族を指す言葉であり、皇太子よりも広い概念です。
そのため、秋篠宮皇嗣殿下のように、皇位継承順位第1位であっても、天皇の皇子ではない場合には「皇太子」ではなく「皇嗣」とされます。
皇太子と皇嗣の違いは、単なる呼び名の違いではなく、皇室典範上の位置付けの違いでもあるのです。

以上、入門編でした。

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