天皇の地位を「推し活」アイドルに落とし込む「愛子天皇肯定論」の浅すぎる皇室観について

感想、反論
愛子天皇肯定論―皇室にとって伝統とは何か―
近年、「愛子天皇論」が大きな注目を集めている。かつては一部の専門家や政治家が議論するにとどまるテーマだった。しかし今では、多くの国民が関心を持つ話題になった。その理由は単純だ。天皇陛下の長女である敬宮愛子内親王が、多くの国民から深く敬愛…

令和8年(2026)11月7日付の「内外タイムス」に、志水優氏(以下、「筆者」)による「愛子天皇肯定論―皇室にとって伝統とは何か―」と題する記事が掲載されました。

筆者は、愛子内親王殿下の人格や国民からの敬愛を理由に、女性天皇の容認を主張しています。

この記事を読み終えて感じるのは、「筆者がそもそも皇位継承をどれほど理解しているのか」、という疑問です。「皇室にとって伝統とは何か」と大仰な副題を掲げていますが、肝心の中身は驚くほど薄いです。


1 天皇は国民人気で決めるべきではない

筆者は、天皇が日本国民統合の象徴であることを理由に、「国民から敬愛される存在であることが重要」だと説きます。

しかし、天皇は国民からの人気や個人的な資質を審査されて選ばれる存在ではありません。
「皇統に属する男系の男子」という血統原理によって皇位を継承されるのです。

ところが筆者は、愛子内親王殿下(以下、「愛子さま」)のご人格、笑顔、親しみやすさなどを繰り返し称賛します。

それらが皇位継承資格と何の関係があるのでしょうか。

国民からの敬愛を継承資格の判断基準にするのであれば、より人気の高い皇族が現れた場合には、その方を優先するのでしょうか。反対に、国民からの支持が低下した皇族は、継承順位を下げるべきなのでしょうか。

これでは、芸能人の人気投票ではないですか?
皇室を論じているつもりが、いつの間にかアイドルの「推し」を語るような議論になってはいないでしょうか。

このように、天皇の地位を「血統」ではなく「個人の人格」を物差しで測るような方法にした場合、天皇は史上最も不安定な地位となることでしょう。安定的な皇位継承とは対極です。


2 愛子天皇の「次」はどうするのか

筆者の言う通り、愛子さまが天皇になったとします。
愛子さまは男系の皇族ですから、即位が直ちに女系継承を意味するわけではありません。

しかし、問題はその先です。
愛子さまの次代の皇位はどなたが継承するのでしょうか。
引き続き男系継承を維持するのでしょうか。それとも女系継承まで認めるのでしょうか。

筆者は「皇室の未来」を盛んに語っていますが、愛子天皇の先の未来については一向に語られていません。
目の前の一代だけを論じて、あとは後世に丸投げするというのであれば、それは安定的な皇位継承の議論と呼ぶことはできないでしょう。


3 耳に聞こえの良い「男女平等」に流されすぎ

筆者は「皇室だけ男性中心は国民の理解を得られない」と主張します。

皇室典範が皇位継承資格を男系男子に限定しているのは、女性の人格や能力が男性より劣るからではありません。126代に渡り続いてきた「男系による継承原理」を維持するために最も合理的だからです。

これを男女差別の問題のように論じ、安易な平等論に持ち込むのは、あまりにも皇位継承について理解がなさすぎます。


4 皇嗣殿下のご存在はどこへ消えたのか

さらに不可解なのは、筆者が愛子天皇の実現を訴える一方、秋篠宮皇嗣殿下のご存在について、ほとんど論じていないことです。

令和2年(2020)11月8日、天皇陛下は「立皇嗣宣明の儀」において、秋篠宮殿下が皇嗣であることを広く内外に宣明されました。

本日ここに,立皇嗣宣明の儀を行い,皇室典範の定めるところにより文仁親王が皇嗣であることを,広く内外に宣明します。

立皇嗣宣明の儀の天皇陛下のおことば(令和2年11月8日)(宮内庁)

さらに、その次代には悠仁親王殿下がおられます。
令和8年7月27日の国会答弁でも、政府は現在の皇位継承の流れを揺るがせにしてはならないという立場を改めて示しています。

すでに定められている皇位継承の流れを変更しようというのであれば、相応の理由が必要でしょう。
愛子さまがどれだけ立派なお方であったとしても、皇嗣殿下と悠仁親王殿下の継承順位を覆す理由にはなりません。

筆者は愛子さまが天皇にふさわしい理由を熱心に語りますが、なぜ立皇嗣宣明の儀を反故にしてまで現在の継承秩序を変更しなければならないのかを、まるで説明していないのです。


5 ぜひ制度論をしてください

筆者は記事の終盤で、次のように述べています。

「愛子天皇論は、単なる制度論ではない。」

何とも奇妙な一文です。
この記事には制度論がほとんど存在しません。
愛子さまのご人格が素晴らしい。国民から敬愛されている。親しみやすい。だから天皇になられてもよい。

結局のところ筆者の主張はこの繰り返しであり、「人物論」に終始しています。

制度の変更を訴えるのであれば、制度論をしていただきたいものです。

筆者には、人物への礼賛と皇位継承の正統性を混同することなく、「皇室の伝統」について再考していただきたいと思います。

おわり。


ところで

筆者はわずか15日前の10月23日付の記事で、

「人物への好感と皇位継承制度は本来区別して考えなければならない」

と述べています。
今回の筆者は、この自分自身の考えと真逆の記事を書いているように思えてならないのですが…。
内外タイムス社は、たった15日前と反対の主張をする志水優氏についてどのようにお考えなのでしょうか?

都内で「愛子さまを皇太子に」デモに約400人が参加 皇室典範改正問題を超えた共通した意見とは   – 内外タイムス
10日、東京都内で「愛子さまを皇太子に」と訴えるデモ行進が行われた。主催したのは「愛子天皇を考える会」で、報道によると約400人が参加したという。参加者は銀座や新橋周辺を歩きながら、愛子内親王殿下への皇位継承資格付与や、皇位継承のあり方につ…

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