【反論】神武天皇以来の世襲を「フィクション」と片付ける乱暴さ【河内春人氏】

感想、反論
改正皇室典範に「女系天皇」議論置き去りと「旧宮家養子案」への懸念…ベストセラー『継体天皇』著者が警鐘(週刊女性PRIME) – Yahoo!ニュース
10月24日、改正皇室典範が施行された。その改正議論の高まりを背景に、発売から半年もたたずに8万部を超えるベストセラーになっているのが『継体天皇 六世紀に現れた世襲王権の「始祖王」』(中公新書)だ。

今回は『週刊女性PRIMME』より、
「日本古代史研究を専門とする関東学院大学の河内春人教授」の10月27日記事

タイトル
「改正皇室典範に「女系天皇」議論置き去りと「旧宮家養子案」への懸念…ベストセラー『継体天皇』著者が警鐘」

について取り上げていきたいと思います。

同記事によると、河内春人氏の経歴等は以下のとおり。

関東学院大学経済学部教授。明治大学大学院博士後期課程中退。史学博士。
日本・東アジア古代史研究を専門とする。
著書に『継体天皇 六世紀に現れた世襲王権の「始祖王」』『倭の五王』(共に中公新書)など


「”神武天皇以来の世襲”は学問的にはフィクションの領域」

河内氏は、皇位継承をめぐる議論について次のように述べています。

「政治家が主張する歴史と歴史的事実は別問題です。例えば“神武天皇以来の世襲”というのは学問的にはフィクションの領域で、それを事実とするのは危険でしょう。“伝統”という言葉をそのままうのみにするのではなく、それはいつの時代を指すか、事実に基づく検証が必要です。」

僕は、この「学問的にはフィクション」という表現に強い違和感と疑問を感じます。

日本は神話と歴史が地続きの国

日本の神話と古代史を語るうえで欠かせないのが、『古事記』『日本書紀』(記紀)です。

記紀では、天地の始まりから神々の誕生、天孫降臨、神武天皇の即位、そして歴代天皇の事績が、一連の物語として語られています。
神代と人代の区別はありますが、天照大御神から神武天皇を経て歴代天皇へと至る皇統の系譜は、途切れることなく描かれています。神がいつ人になったのかを語ることすらなく極めて自然な流れで神代と人代は繋がっています。

つまり、日本の皇統は神話と歴史が地続きのものとして語り継がれてきたのです。
そして、この物語が千年以上にわたって現代まで受け継がれてきたこと自体が、フィクションではなく、紛れもない歴史的事実です。

神話による正統性は現在の皇室にも受け継がれている

天皇の伝統的な正統性は、皇祖神である天照大御神、天孫降臨に際しての神勅、そして神武天皇以来の皇統という、一連のつながりによって説明されてきました。

天照大神の「神勅」

天照大神
「葦原あしはらの千五百秋ちいほあきの瑞穂の国は、私の子孫が王として治めるべき国です。皇孫よ、この国に赴いて治めなさい。さあ、お行きなさい。皇位の栄えることは、天地とともに永遠に尽きることはありません」

葦原千五百秋之瑞穂国、是吾子孫可王之地也。宜爾皇孫、就而治焉。行矣。宝祚之隆、当与天壌無窮者矣。
『日本書紀』巻第二・神代下、第九段の一書より 天壌無窮の神勅

これは「天壌無窮の神勅」と呼ばれるもので、天照大神の子孫、つまり天皇がこの国を治める正統性の根元になっています。
それゆえに、現在も天皇陛下は「天皇」という地位におられるわけです。
新嘗祭をはじめとする宮中祭祀で神々をお祀りするのも、このような神話からの繋がりがあるからです。

神武天皇以来の世襲をフィクションと位置付けた場合何が起きるか。
どういった正統性のもとで祭祀が行われているのか?なぜ宮中で神を祀っているのか?
神武天皇から血統が途切れているのなら、そもそも「なぜ今の陛下は天皇でいられるのか?」
というように、根本からその正統性が崩れてしまいます。

国家の伝統は史実だけで成り立つのか

河内氏のいう「学問」とは、主に歴史学や考古学を指しているのでしょう。
その点では氏の「事実に基づく検証が必要」という意見に異論はありません。

しかし、神話や伝承は、宗教学、民俗学、神話学、文化人類学、思想史、文学など、さまざまな学問の研究対象でもあります。実際に記紀はこれら全ての学問の見地から研究の対象とされてきました。

国家の成り立ちは、歴史学や考古学によって証明された事実だけでは説明できません。

人々が自らの起源をどのように理解し、何を尊び、語り継いできたのか。
そうした神話や伝承もまた、国家や国民の精神的な基盤を形づくってきたのです。

僕は、神武天皇の実在や初期の皇統を歴史学的に証明しようというのではありません。

歴史学的に証明できないことと、国家の伝統として尊重する価値がないことは、同義ではないと言いたいのです。

神武天皇以来の皇統の物語は、今日まで受け継がれ、現在の皇室にも生きています。
だからこそ、僕はこれを「フィクション」と一括りにすることに抵抗を感じるのです。

この河内氏の言説をもとに、「男系は伝統ではない、だから女系でも構わない」と短絡に考える人がおられないことを希望します。

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