【反論】ツッコミどころ満載の改正皇室典範批判【立民・長浜博行氏】

感想、反論
男系維持前提の養子縁組「とんでもない改悪」◆改正皇室典範を批判、立民・長浜博行前参院副議長インタビュー:時事ドットコム
皇族数減少に歯止めをかけることを狙った改正皇室典範が24日に施行される。①女性皇族が結婚後も皇室に残る②旧11宮家の男系男子を養子として皇室に迎える―という2策を可能にする内容。ただ、女性皇族の子を一般人と位置付け、養子に生まれた男子に皇位…

今回は10月9日の時事ドットコムの記事、
「男系維持前提の養子縁組「とんでもない改悪」◆改正皇室典範を批判、立民・長浜博行前参院副議長インタビュー」
に反論、ツッコミを入れていきたいと思います。

長浜博行氏は、立憲民主党議員であり、国会の前参院副議長です。
10月24日に施行が予定されている改正皇室典範について「今後の課題」をインタビューした、という形式のものです。

反論1 旧宮家養子制度は必要

長浜氏の主張1

長浜氏は次のように主張しました。

安定的な皇位継承の在り方について議論せず、なぜ(小泉内閣時代の有識者会議が『採用は極めて困難』と結論付けた)養子縁組の話に踏み込んだのか、理解不能だ。養子縁組は(皇統に乱れが生じる)「宗系紊乱(びんらん)」を招きかねず、大日本帝国憲法時代も日本国憲法下の皇室典範でも禁じられてきた。秋篠宮家の長男悠仁さままでの皇位継承の流れがある中でやる議論ではない。

記事から引用。以下同じ

皇族が養子を取るのは「宗系紊乱」を招くおそれがあるため、明治の皇室典範でも、現憲法下での皇室典範でも禁じられてきたにもかかわらず、なぜ今回これに踏み込んだのか理解不能としています。

これまで養子を禁じてきた皇室典範

明治の皇室典範
第四十二條 皇族ハ養子ヲ爲スコトヲ得ス

現行皇室典範(令和8年10月11日現在)
第九条 天皇及び皇族は、養子をすることができない。

とあり、確かに養子が禁じられています。
なお、10月24日施行予定の改正皇室典範でも第九条は維持されており、これの除外規定として、旧宮家の15歳以上の男系男子子孫に限り養子とすることができるとされています。

「宗系紊乱」は起き得ない

「宗系紊乱」の出典は、明治22年・伊藤博文の『皇室典範義解』(皇室典範の注釈・解説書)であり、そこには

皇族互ニ男女ノ養子ヲ為スコトヲ禁スルハ宗系紊亂ノ門ヲ塞クナリ

とあります。
現代語にすると、「皇族同士で男女の養子を迎えることまで禁止するのは、皇統の系統が乱れる原因を防ぐためである」という意味です。

結論を言うと、今回の養子縁組制度により、この「宗系紊乱」が起きることはありません。

すでに触れていますが、今回の改正皇室典範では単に養子の対象者を限定するだけでなく、宗系紊乱を防ぐための規定も設けられています。
具体的には、第38条で次のように定めています。

  • 第1項:養子の対象を、旧皇族男子の嫡男系嫡出の子孫などに限定する。
  • 第5項:養子となった男子の皇族としての身位は、実方の系統(実際の血統。つまり、養親ではなく実親の血統)に基づいて決める。
  • 第6項:その子孫の皇位継承順位も、実方の系統に基づいて決める。

このように制度設計により「宗系紊亂ノ門」を塞いでいます。

長浜氏の矛盾

立憲民主党は、女性天皇の実現に明確に賛成しています。
また、女系天皇については党として賛否を明らかにしていませんが、小泉内閣時代の有識者会議報告(女系天皇を容認した内容)を再確認・再認識するよう5月15日に提案しています。
「皇位継承に関する全体会議」を開催、とりまとめに向け各党が自由討議(立民公式)

長浜氏は養子制度を「宗系紊乱」だから不可と言いますが、女系天皇の入り口となる女性天皇に賛成し、女系天皇そのものにも反対を示していないことは大きな矛盾です。

女性天皇(または女性皇族)と、皇統と無関係の一般国民男性との間に子が生まれ、その子に皇位継承資格を認めた場合、その子は従来の皇統とは明らかに異なる地位で即位することになります。

これを「宗系紊乱」と言わずして何と言うのでしょうか。

養子縁組は早期になされるべき

長浜氏は、「秋篠宮家の長男悠仁さままでの皇位継承の流れがある中でやる議論ではない」と言っていますが、養子縁組による皇室入りはできる限り早い段階で行われることが望ましいと思います。

まず大前提として、養子本人には継承資格はなく、悠仁親王殿下(以下「悠仁さま」)までの皇位継承の流れは確定しています。
しかし、悠仁さまの次の代の継承を見越して、「盤石な体勢」を整えておくことは必須です。

現実問題として、悠仁さまのもとに男子がお生まれになるとは限らないのですから、継承資格者を複数人用意するということは必須であり、これは安定的な皇位継承に直結します。
また、そうすることによって悠仁さまと将来の妃殿下の、立場から生ずるプレッシャーを軽減することも期待されます。

早期の縁組を実現し、早い段階で皇族としてのご活動を始められることは、「国民の理解」を醸成することにもつながりますし、養子皇族ご本人にとってもそれが望ましいことと考えます。


反論2 女性皇族の身分保持案の方が「痛み」がある

長浜氏の主張2

長浜氏は次のように主張しています。

 立法府の総意では全くなかった。立法府の総意を得られていたのは、女性皇族が結婚後も皇室に残る案。そこに限って改正すべきだった。養子縁組というとんでもない改悪が入ってしまった。政府・与党は結論ありきだった。政治的な発言ができない皇室の方々の「生身の人間」としての痛みを感じる能力が欠如しているか、あるいは意図的に無視しているのではないか。

立法府の総意が得られていたのは養子案ではなく、女性皇族が結婚後も皇室に残る案だったとしています。従来は皇室典範12条により、内親王と女王は一般国民と結婚した場合、皇籍を離脱することとなっていました。今回の改正ではこの第12条が削除されます。

第十二条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。

長浜氏は、この皇籍維持制度には賛成しており、
対して養子縁組制度こそが皇室の方々を「生身の人間」として見ていない「とんでもない改悪」だと断じています。

養子縁組は、養子と養親双方の合意があって成り立つ任意の制度である

養子をまるで非人道的な制度であるかのように言っていますが、養子縁組はそもそも強制ではありません。
縁組は養子側と養親側の双方で合意が必要です。
さらに、改正法第38条によると一般の養子縁組とは異なり、皇族との縁組は皇室会議の議決を経るというプロセスが加わります。

よって、国民を強制的に皇族とするような制度ではなく、求められなければ機能しない任意のものであり「とんでもない改悪」というのは明らかに言い過ぎだと思います。

むしろ、女性皇族の身分保持案の方が改悪

「皇室の方々の『生身の人間』としての痛みを感じる能力が欠如しているか、あるいは意図的に無視している」と言えるのは、むしろ女性皇族の婚姻後身分保持案の方ではないかと思います。

女性皇族(内親王・女王)は婚姻により皇籍を離脱し、一般国民となる権利が与えられていたところ、今回の改正によりその権利は奪われました。
女性皇族にとり、事実上唯一の「一般国民として自由に生きる道」というものがなくなってしまったということです。

もっとも、現在の内親王・女王については経過措置として婚姻後も皇室に残るのか、皇籍を離脱するのかを選択することはできます。しかし、新たに生まれてくる女性皇族は原則として一生を皇族として生きることとなります。

縁組制度は旧宮家男系男子の「権利」、身分保持制度は女性皇族の「義務」
こちらの方がよほど「生身の人間」の痛みを無視しているとは言えないでしょうか。


まとめ

① 旧宮家養子制度は必要である

  • 養子制度は旧宮家の男系男子に対象を限定し、血統に基づいて身位や皇位継承順位を定めるため、「宗系紊乱」は起きない。
  • 女性・女系天皇の容認に前向きな立民が、養子制度を宗系紊乱のおそれがあるとして批判するのは矛盾している。
  • 悠仁さまの次の世代を見据えて、早期に養子縁組を進めるべきである。皇位継承の安定化だけでなく、悠仁さまと将来の妃殿下への負担軽減や国民の理解促進にもつながる。

② 女性皇族の身分保持制度の方が問題である

  • 養子縁組は当事者双方の合意に基づく任意の制度であり、皇族になることを強制するものではない。
  • 一方、女性皇族の婚姻後の身分保持制度は、従来認められていた婚姻による自動的な皇籍離脱の道を断つ。
  • そのため、皇族個人の自由や負担という観点では、むしろ女性皇族の身分保持制度の方が問題である。

旧宮家養子制度を「とんでもない改悪」と批判する長浜氏こそ、皇族個人の自由について十分に考慮していないのではないでしょうか。

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