前編では、平成期の麻生氏の国会における皇室関連発言で、氏の皇室観や国家観について触れてきました。
| 時期 | 年齢 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 昭和15年(1940)9月20日 | 0歳 | 福岡県に生まれる |
| 昭和38年(1963)3月 | 22歳 | 学習院大学政経学部を卒業 |
| 昭和41年(1966)8月 | 25歳 | 麻生産業株式会社に入社 |
| 昭和48年(1973)5月 | 32歳 | 麻生セメント株式会社代表取締役社長に就任 |
| 昭和51年(1976) | 35〜36歳 | モントリオール五輪にクレー射撃日本代表として出場 |
| 昭和54年(1979) | 39歳 | 衆議院議員に初当選 |
| 平成13年(2001)1月 | 60歳 | 国務大臣・経済財政政策担当に就任 |
| 平成15年(2003)9月 | 63歳 | 総務大臣に就任 |
| 平成17年(2005)10月 | 65歳 | 外務大臣に就任 |
| 平成19年(2007)8月 | 66歳 | 自民党幹事長に就任 |
| 平成20年(2008)9月 | 68歳 | 第23代自由民主党総裁に就任 |
| 平成20年(2008)9月24日 | 68歳 | 第92代内閣総理大臣に就任 |
| 平成21年(2009)9月16日 | 68歳 | 内閣総理大臣を退任 |
| 平成24年(2012)12月 | 72歳 | 副総理・財務大臣・金融担当大臣に就任 |
| 令和3年(2021)10月 | 81歳 | 自民党副総裁に就任 |
| 令和5年(2023)11月 | 83歳 | 自民党「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」会長に就任 |
| 令和6年(2024)4月 | 83歳 | 同懇談会で皇位継承に関する自民党の所見取りまとめに関わる |
| 令和8年(2026)現在 | 85歳 | 衆議院議員。自民党副総裁、選挙対策本部長代行、同懇談会長 |
⭐️参考 ・麻生太郎(自民党)
今回は、令和5年(2023)11月「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」(以下、「懇談会」)設置の経緯から、麻生氏の懇談会会長としての活動についてまとめ、時系列で整理していきます。
①「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」設置の経緯
まずは、令和5年に新設された、安定的な皇位継承の確保に関する懇談会(以下「懇談会」)が設置されるに至った経緯から見ていきましょう。
【議論の出発点】平成29年(2017)6月 退位特例法の附帯決議

出発点は、平成の天皇陛下(現・上皇陛下)の譲位にかかわる議論からでした。
天皇の一代限りの譲位を認める「退位特例法」(正式名称:天皇の退位等に関する皇室典範特例法)には附帯決議があります。
⭐️附帯決議とは?
ざっくり言うと、法律案を可決するときに、国会の委員会が政府などに対して付ける「注文書」のようなものです。たとえば「この法律を実施するにあたって、こういう点に配慮せよ」「今後この課題を検討せよ」という内容です。
附帯決議そのものには法的拘束力はありませんが、国会の委員会で正式に議決されるので、政府に対する圧力・要請になるため、決して軽いものではありません。
⭐️参考 委員会の活動(1)法律案の審査(参議院)
附帯決議の内容(要約)
決議の内容は衆参共通で、政府に対し以下の3点を求めています。
- 安定的な皇位継承の確保・女性宮家の創設等について、法施行後速やかに検討し国会に報告すること。
- 国会は報告を受けて「立法府の総意」として皇位継承策を検討すること。
- 改元に伴って国民生活に支障が生じないよう、政府が万全の配慮を行うこと。
⭐️参考 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」附帯決議 参議院資料(PDF)
⭐️立法府の総意とは?
政府ではなく、国会、すなわち衆議院・参議院の各党各会派の共通見解のことです。
皇位継承のような国の根幹に関わる問題について、特定の政党だけでなく、できる限り幅広い合意をもとに方針を定めようとする考え方です。
令和3年(2021)3月〜12月 有識者会議による報告書がとりまとめられる

この附帯決議の第1項に基づいて令和3年3月、政府に有識者会議(正式名称:「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議)が組織されました。そして、13回に及ぶ会議を経て、同年12月に最終報告書が取りまとめられ、翌令和4年(2022)1月に岸田総理により国会に提出されました。
⭐️参考 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する国会報告(政府広報オンライン)
有識者会議報告書の概略
有識者会議報告書の内容についてここでは深入りしませんが、ざっくり言うと「現在の皇位継承順位は動かさず、まず皇族数の確保を急ぐべき」という内容です。
具体策としては、主に次の3つが検討されました。
- 内親王・女王が結婚後も皇族の身分を保持すること。
ただし、その配偶者や子は皇族とせず、子にも皇位継承資格を持たせない制度設計が考えられる、とされています。 - 皇族の養子縁組を可能にし、皇統に属する男系男子を皇族にすること。
この場合、いわゆる旧11宮家の皇族男子の男系男子孫を養子として迎えることも考えられる、とされています。 - 皇統に属する男系男子を法律によって直接皇族にすること。
これは前の1,2で十分な皇族数を確保できない場合に検討するもの、という位置づけです。
⭐️参考 報告 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案 に対する附帯決議」に関する有識者会議(内閣官房、PDF)
この報告書により、附帯決議の第1項が求める「政府による検討と国会への報告」という手続きは、ひとまず一区切りがついたことになります。
②自民党内に「懇談会」設置、麻生氏が会長に就任
続いて、附帯決議第2項の
「報告書に基づいて『立法府の総意』としての皇位継承策を検討する」段階に入りました。
令和5年(2023)11月10日 懇談会初会合

自民党は有識者会議の報告書を受けて、令和5年(2023)11月、党内に総裁直属の「特別の機関」として懇談会を設置し、初会合で麻生氏(党副総裁)が会長に就任しました。
麻生会長の発言
皇室の在り方はわが国の根幹を成す極めて重要な課題であり、事柄の性質も考えて、限られたメンバーで静謐な環境の中で、議論を深めていきたい
麻生氏は、皇室のあり方を「わが国の根幹を成す極めて重要な課題」と位置づけたうえで、事柄の性質に鑑み、「限られたメンバーで静謐な環境の中で」議論を深める考えを示しました。
これは、皇位継承・皇族数確保の問題を、党派の対立や世論の過熱に委ねるのではなく、現在の皇族方及びその関係者に配慮した、慎重な議論として扱う姿勢を示したものといえるでしょう。
⭐️参考 安定的な皇位継承の確保に関する懇談会 有識者報告書について政府から説明聴取(自民党)
③自民党の公式見解として「所見」がまとめられる
| 時期 | 動き | 内容 |
|---|---|---|
| 令和5年11月10日 | 初会合 | 麻生氏が会長として就任。政府から有識者会議報告書について説明を受けた。麻生氏は「限られたメンバーで静謐な環境の中で、議論を深めていきたい」と発言。(自民党) |
| 令和6年3月18日 | 政府有識者会議報告書について意見交換 | 有識者会議報告書の内容について議論。報告書が示した皇族数確保策のうち、まず「内親王・女王が婚姻後も皇室の身分を保持する案」について意見が交わされた。終了後、木原誠二事務局長は「出席者の多くが理解を示した」と説明。(自民党) |
| 令和6年4月4日 | さらに報告書を検討 | 前回に続き、有識者会議報告書について意見交換。この段階で、①女性皇族の婚姻後の皇族身分保持、②皇統に属する男系男子を養子に迎える案、を優先的に検討し、それでも足りない場合に③法律により皇統に属する男系男子を直接皇族とする案を議論する、という方向になる。(自民党) |
| 令和6年4月15日 | 第4回会合・論点整理 | 懇談会の第4回会合。これまでの議論を踏まえ、取りまとめに向けた論点整理を実施。自民党公式では、この時点で、①案と②案を優先し、必要に応じて③案を検討することで「おおむね意見が一致」と説明されている。(自民党) |
| 令和6年4月19日 | 党所見の対応を麻生会長に一任 | 懇談会は、皇族数確保に向けた党の所見について、今後の対応を麻生会長に一任することを確認した。木原事務局長は、党所見について、政府有識者会議報告書と「ほぼ軌を一にする」と説明。(自民党) |
| 令和6年4月26日 | 党所見を衆参両院議長に提出 | 党は「安定的な皇位継承の在り方に関する所見」を衆参両院議長に手交。(自民党) |
令和6年(2024)3月〜4月 懇談会による所見をまとめ、国会に提出
第2回〜第5回会合では、有識者会議報告書の内容に基づき議論が行われました。
そして4月26日には、有識者会議報告書の内容と“ほぼ軌を一にする”「安定的な皇位継承の在り方に関する所見」を国会の衆参両院議長に手交しました。これは懇談会内の単なる論点整理ではなく、自由民主党名義でまとめられた公式見解です。
これは麻生氏が会長として関与した懇談会の議論が、自民党の公式見解として結実したものであり、令和以降の皇位継承・皇族数確保議論における麻生氏の役割を考えるうえで、非常に重要な位置を占めるものといえそうです。
⭐️参考 安定的な皇位継承の在り方に関する所見(自民党、PDF)
麻生氏の発言について
結論から言うと、懇談会の第2回以降には麻生氏の発言として確認できるものはありませんでした。2回目以後の会合については、麻生氏個人の発言というより、会長として懇談会を主宰し、党内の意見集約と所見の取りまとめを担った点に注目すべきでしょう。
④フェーズは立法府協議へ

こうして、麻生氏が会長を務めた党懇談会は、政府の有識者会議報告書を踏まえ、現在の皇位継承の流れをゆるがせにしないことを前提に、喫緊の課題である皇族数確保策について党内の意見を整理しました。
そして、その所見を衆参両院議長に提出するに至り、以後、退位特例法の附帯決議第2項に基づいて、議論の舞台は自民党内から、立法府における衆参正副議長の下での各党協議へと移っていきます。
終わりに
後編はここまでとさせていただきます。
以後の動きは現在進行形の内容となりますので、随時更新の記事を別立てして書いていきたいと思います。
以上、皆様の情報整理のお役に立てましたら幸いです。



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