【入門編】皇室会議とは何か?皇室典範をもとに分かりやすく解説【皇族数確保問題】

入門編

皇室会議は、その言葉を耳にしたことはあっても、どういうものなのかを把握している人は少ないと思います。実際、内容までニュースなどで取り上げられることは少なく、目立たない印象です。

ですが、皇室会議は、皇室に関する重要事項について話し合う会議です。たとえば、皇族の婚姻や身分、摂政の設置、皇位継承の順序に関わる問題など、皇室制度の運用に大きな影響を与える事項が扱われます。

そのため、皇室会議の仕組みを理解しておくことは、皇室制度を考えるうえでの基本になります。
皇室会議は皇室典範をもとに運営されるので、皇室典範の規定を見ていきましょう。

①皇室会議で話し合われる内容

引用は、記載のないものは全て皇室典範からのものです。

1. 皇位継承順位の変更

第三条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。

これは、皇室会議で決定される最も重たい議題のひとつでしょう。皇室典範は何をもって「重大な事故」であるのかを書いていないため、これを決定付けるのが皇室会議の大きな役割になりそうです。

2. 天皇・皇族男子の婚姻

第十条 立后りっこう及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する。

立后とは、皇后を立てること。すなわち天皇の配偶者になることです。
つまり天皇の婚姻は皇室会議による決定が必要になります。

皇族男子の婚姻は皇室会議の決定が求められますが、皇族女子はこれを要しません。
これは、皇族男子の婚姻はその配偶者である女性、特に一般国民の女性であれば、新たに「妃」として皇室のメンバーが増えるために、皇室や社会に与える影響が皇族女子の婚姻に比べ大きいことが理由でしょう。

3. 皇籍の離脱に関すること

第十一条 年齢十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
② 親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。

第十四条 皇族以外の女子で親王妃又は王妃となつた者が、その夫を失つたときは、その意思により、皇族の身分を離れることができる。
② 前項の者が、その夫を失つたときは、同項による場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。

皇籍離脱に関する事項のうち、本人の意思だけではなく皇室会議の議を必要とする場合があります。
ただし、皇族女子が一般国民との婚姻により皇籍を離れる場合には皇室会議は開かれません。

4. 摂政に関すること

第十六条 ② 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。

第十八条 摂政又は摂政となる順位にあたる者に、精神若しくは身体の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、摂政又は摂政となる順序を変えることができる。

第二十条 第十六条第二項の故障がなくなつたときは、皇室会議の議により、摂政を廃する。

摂政の設置

摂政は、天皇が未成年である場合、または精神や身体の重患・重大な事故がある場合に、天皇に代わって国事行為を行う役職です。このうち、後者の場合には皇室会議の決定を要します。

摂政就任順位の変更

現に摂政の任に就いている者や、摂政就任順位が第1位の者が精神や身体の重患・重大な事故がある場合、摂政の変更やその順位を変更することができますが、皇室会議の決定を要します。

摂政の廃止

「故障がなくなつたとき」つまり、摂政が国事行為をする理由がなくなった時は、皇室会議の決定により摂政は廃止されます。

具体的には

ここで重要なのは、摂政を置くこと、廃止すること自体は皇室典範で義務付けられているため、皇室会議で話し合われることとは、例えば

摂政の設置であれば「本当に精神や身体の重患で国事行為を行えないのか」といったこと。
摂政の廃止であれば「本当に精神や身体の重患という事情がなくなったのか」といった内容を慎重に話し合うことが考えられます。


②今後、皇室会議が開かれるとしたら

以上見てきたように、皇室会議で話し合われる議題というのは皇室典範で定められており、皇室についての「あらゆる事を決める」のではなく、皇室に関わる「重要事項」に限定されています。

その上で、今後皇室会議が開かれるとしたら、具体的には「悠仁親王殿下の婚姻」だと思われます。

また、現在議論されている「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案」と「旧11宮家子孫の男系男子を養子に迎える案」においても、皇室会議の決定を要する制度設計になる可能性は高いと思います。

例えば、先述のように女性皇族の婚姻は現制度であれば皇室会議の決定は不要でしたが、今後は求められる可能性があります。養子案でも、養子として迎え入れるかどうかは皇室会議の決定を要するものとする場合が考えられます。

直近の皇室会議

直近の皇室会議は、平成29年(2017)12月1日です。

議題は、上皇陛下(当時の天皇陛下)の譲位の日程についてで、皇室典範特例法の施行日を平成31年(2019)4月30日とすべき、という意見が決定されました。

ちなみにその前は、平成5年(1993)1月19日の、当時の皇太子殿下と小和田雅子さんのご婚姻に関する皇室会議です。なので平成29年の会議は、約24年ぶりの開催でした。

このように、皇室会議は常時開かれているような会議ではありません。実際には、皇族男子の婚姻や天皇の譲位日程など、皇室内の極めて重要な事項が生じた場合に限って開かれてきました。そのため、制度としては非常に重要でありながら、開催頻度はきわめて少ない会議です。


③皇室会議の組織

再び皇室典範の規定から見ていきます。

皇室会議の議員定数、議長、予備議員

第二十八条 皇室会議は、議員十人でこれを組織する。
② 議員は、皇族二人、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、宮内庁の長並びに最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる。
③ 議員となる皇族及び最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は、各々成年に達した皇族又は最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官の互選による。

第二十九条 内閣総理大臣たる議員は、皇室会議の議長となる。
第三十条 皇室会議に、予備議員十人を置く。

皇室会議の議員定数は10人。そのうち2人が成年の皇族となっています。
ほか8名の内訳としては、立法府から4人、行政府から2人、司法から2人となっています。

つまり皇室会議は名称こそ「皇室の会議」ではあるものの、皇族だけの合議体ではなく、皇室・国会・内閣・司法をまたぐ国家的な合議機関として設計されているということになります。その中で総理大臣が議長になっているのは、総理が国民に対して政治的責任を負うという立場にあるからでしょう。

天皇と上皇は皇室会議に参加できない

天皇は皇室典範の規定上「皇族ではない」ため、皇室会議に参加する資格がないことになります。

また、上皇は皇族ですが、「皇室典範特例法」の規定により皇室会議の皇族議員とはなれないこととなっています。

皇族議員の任期

第三十二条 皇族及び最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官たる議員及び予備議員の任期は、四年とする。

皇室会議の皇族議員の任期は4年と定められています。
再選を禁じる規定はないため、同じ皇族議員が任期満了後も再選し引き続き議員を務める場合もあります。実例としても、令和5年(2023)にそれまで皇族議員を務めていた秋篠宮皇嗣殿下と常陸宮妃華子殿下が再任されています。

⭐️参考 「皇室会議」の議員選びで辞退者相次ぐ 異例の展開の背景は(毎日新聞 2023/9/28報道)

議事を開き、議決するための最低出席数

第三十四条 皇室会議は、六人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

これは言い換えれば、6人いれば議事を開き、議決することができるということです。このことから、理論上は皇族議員2人、さらに予備議員の皇族議員2人が出席できなかったとしても、議決を行うことができることになります。とはいえ、これは言うまでもなく健全な状態ではないでしょう。

④まとめ「皇族数減少問題」とも強く関わる

皇族数の減少は、皇室会議そのものにも関わってきます。
上で見たように皇室会議は、制度上、一定数の成年皇族が存在することを前提に成り立っているのです。

天皇陛下と上皇陛下は議員になれない。
皇嗣殿下と悠仁親王殿下は将来的に皇位を継承するため、それ以後は議員になれない。
ご高齢の皇族も多い。
現制度では、女性皇族は一般国民との婚姻により皇族の身分を離れる。

そのため、皇族数がさらに減少すれば、皇族議員や皇族予備議員を選ぶこと自体が難しくなる可能性があります。また、現制度のままでは将来的に男性の皇族議員が1人もいなくなる可能性があります。

皇族議員には性別要件はありません。女性皇族のみで議員を構成すること自体は、法的には可能です。

しかし、皇室会議が皇位継承順序の変更、皇族男子の婚姻、摂政の設置・廃止などを扱う以上、男性皇族、特に皇位継承資格を持つ皇族が皇族議員として関与できなくなる状況は、制度の安定性という意味では問題を残すと思います。

この点からも、皇族数確保の議論は、単なる公務分担の問題ではありません。皇室制度を運用していくための、きわめて基本的・根本的な問題でもあるのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました