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1 一定の皇族は、皇室会議の議決を経て、要件を満たす旧宮家の男系男子を養子とすることができる。
2 養子となった男子は縁組と同時に皇族となり、本人には皇位継承資格がない。一方、その子孫は、実方の系統に基づいて皇族としての身分と皇位継承資格を得る。
3 養子皇族男子である王は、自らの意思のみで皇籍を離脱できない。また、摂政就任順序では内親王及び女王の次に位置付けられる。
改正皇室典範が令和8年(2026)7月17日に成立し、同月24日に公布されました。
●皇室典範等の一部を改正する法律案(参議院)として、その内容が確認できます。
「旧宮家養子案」の法制化は、同法律案によると皇室典範に第6章「養子皇族男子」のもと、第38条を新設して皇族の養子縁組を可能にしています。
今回は、改正皇室典範の「旧宮家養子縁組制度」ついて詳しく見ていこうと思います。
皇室典範の第9条に例外を設ける
改正前の典範9条は、天皇及び皇族の養子縁組を絶対的に禁止しています。
(旧)皇室典範第九条
天皇及び皇族は、養子をすることができない。
この第9条を、次のように改正します。
(新)皇室典範第九条
天皇及び皇族は、第三十八条第一項の規定による場合を除き、養子をすることができない。
このように、典範9条を削除するのではなく、例外を設けて皇族の養子縁組制度を実現させています。これにより、天皇は引き続き養子をすることを禁止され、その他の皇族は新設された第38条第1項の場合に限り養子縁組をすることができるようになっています。
それでは、新設された第38条の中身を見ていきましょう。
① 養親になれる皇族
第六章 養子皇族男子
第三十八条 親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王(皇嗣及び皇嗣妃を除く。)は、皇室会議の議を経て、この法律による皇族男子であつた者の嫡男系嫡出の子孫である現に皇族でない年齢十五年以上の男子であつて、配偶者及び子がないものに限り、養子とすることができる。
これによると、養子をすることができる皇族は「親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王」となっています。ただし、これら皇族のうち、皇嗣と皇嗣妃を除くこととされています。
これら「皇族」、「皇嗣・皇嗣妃」についての詳細はこちらの入門記事↓をご覧ください。


養子縁組の手続き
また、その手続きとしては、皇室会議の議決を経ることとされ、一般国民間での養子縁組手続に必要となる家庭裁判所の許可を不要とし(第38条2項)、養子となった者はその縁組の時点において皇族となることとされています(同条3項)。

養親になれない皇族
改正典範38条1項では、養子をすることができる皇族を列挙しています。つまり、逆に言えばこの中に挙げられていない「皇后、皇太后、太皇太后、上皇、上皇后」は養子をすることができないことになります。
そして、同条では「皇嗣及び皇嗣妃」を除外しています。現皇室においてお名前を具体的に言えば、秋篠宮皇嗣殿下(文仁親王殿下)と皇嗣妃殿下(紀子親王妃殿下)です。
また、「皇嗣」には皇太子、皇太孫も含まれ、これと同様に「皇嗣妃」には皇太子妃、皇太孫妃も含まれます。
② 旧宮家系統の男系男子に限って養子になれる
改正典範の「この法律による皇族男子であつた者の嫡男系嫡出の子孫」とは、具体的には、旧宮家の男系男子のことを指しています。
これを憲法違反とする指摘がありますが、この問題については以下の記事を参考してください。

さらに養子となるための細部の要件としては、
- 現に皇族でない
- 15歳以上
- 独身であり、子がいない
こととなっています。
③ 養子皇族男子は皇位継承資格を持たない
第三十八条第四項 養子皇族男子(前項の規定により皇族となつた皇族男子をいう。以下この条において同じ。)については、第二条の規定は、適用しない。
養子皇族男子とは、現皇族と養子縁組をして皇族となった旧宮家系統の男系の男子のことをいいます。
典範第2条は皇位継承順位を定めています。
この規定を適用しないということは、「養子となった皇族は皇位継承資格を持たない」ことになります。
養子皇族男子の男系男子孫は皇位継承資格を持つ
第三十八条第六項 (前略)養子皇族男子の子孫に係る第二条及び第六条の規定の適用については、実方の系統によるものとする。
養子皇族男子に男子が生まれた場合、その男子には皇室典範第2条と第6条の規定が適用されます。
第6条は皇族の身分を定めており、天皇の男子と男系の孫を親王(女子は内親王)、男系の曾孫以下を王(女子は女王)としています。
「実方の系統による」というのは養親ではなく、実親の系統、つまり旧宮家の系統に基づいて皇位継承資格を有するという意味です。これによると、養子皇族男子は天皇の男系曾孫以下として「王」の身分を得ることとなります。
また、養子皇族男子自身も第6条を適用し、王の身分を得ることと整理されています(改正典範第38条第5項)。
④ 養子皇族男子の皇籍離脱
養子皇族男子は自らの意思で皇籍を離脱できない
第三十八条第七項 養子皇族男子である王については、第十一条第一項の規定は、適用しない。
典範第11条第1項は、皇族の自らの意思に基づいた皇籍離脱について規定しています。
つまり、「養子皇族男子は自らの意思により皇籍を離脱できない」こととなります。
養子皇族男子はやむを得ない事情で皇籍を離脱する場合がある
第三十八条第八項 養子皇族男子が第十一条第二項の規定により皇族の身分を離れる場合において、養親(皇族の身分を離れた者を除く。)との縁組が継続しているときは、当該縁組は、将来に向かつてその効力を失う。(以下略)
典範第11条第2項は、本人の意思による皇籍離脱とは別に、やむを得ない事情による皇籍離脱について規定しています。
改正典範は、養子皇族男子のやむを得ない事情による皇籍離脱を容認しています。そして、皇籍を離脱した場合、養親との親子関係はその時点から解消されることとなります。
⑤ 養子皇族男子は摂政に就任する資格がある
改正典範第38条第9項に掲げられた表によると、養子皇族男子は摂政就任順位を付されることとなります。
摂政は天皇に代わって国事行為を執り行う職で、典範第16条に規定があります。
①天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。
②天皇が精神若しくは身体の重患又は重大な事故により国事行為を自ら行えないときは、皇室会議の議により摂政を置く。
そして、現行の典範第17条では、摂政就任順序を以下のように定めています。
第十七条 摂政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 内親王及び女王
養子皇族男子は、この順位に「七 養子皇族男子」を加えられ、摂政就任順序は第7位となります。
養子皇族男子は現時点においては先述の通り「王」になるとみられるため、摂政就任順序は第2位になるように思えますが、改正典範では「二 親王及び王(養子皇族男子を除く)」とし、これを除外しています。
まとめ
今回の皇室典範改正によって、皇族が旧宮家の男系男子を養子に迎える制度が新しく設けられました。
養親になれるのは、皇嗣と皇嗣妃を除く親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王です。養子になれるのは、旧宮家の男系男子のうち、15歳以上で、配偶者や子がいない人に限られます。
養子になった男子は、養子縁組が成立した時点で皇族となり、「養子皇族男子」と呼ばれます。ただし、養子皇族男子本人には皇位継承資格はありません。
一方で、その子孫の男系男子については、養親の家系ではなく、実の父方である旧宮家の系統に基づいて、皇族の身分や皇位継承資格が判断されます。
また、養子皇族男子は、自分の意思だけで皇籍を離れることはできません。摂政に就任する順序も、通常の親王や王とは別に定められています。
つまり養子皇族男子とは、皇族として活動する一方で、皇位継承や皇籍離脱については、他の皇族男子とは異なる扱いを受ける特別な立場の皇族です。
改正皇室典範は7月24日に公布となり、施行は3ヶ月後の10月24日です。施行後の実際の制度運用がどうなるのか、注視を続けたいと思います。

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