皇室典範改正要綱に「30年見直し規定」が盛り込まれる
令和8年(2026)6月24日報道によると、「衆参両院は24日、皇族数確保策に関する皇室典範改正案の要綱を公表した。要綱は政府が作成し、両院の正副議長が同日、了承した。」とのことです。
この要綱によると、皇族数確保のため示された2案
・女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案(以下、身分保持案)
・旧宮家の男系男子が皇族の養子となる案(以下、「旧宮家養子案」または「養子案」)
は、「皇族数の確保状況を勘案し、必要がある場合は30年ごとに見直す」こととされました。
⭐️参考 皇室典範等の一部を改正する法律案要綱(衆議院、PDF)
今回は、その理由について取り上げていきたいと思います。
見直し規定は、旧宮家養子案を念頭に置いている
この見直し規定は、形式上は改正部分全体についてのものですが、その中心は「旧宮家養子案」を念頭に置いているものとみられます。
というのも、6月10日にまとめられた「立法府の総意」の段階で、すでに見直しについて触れられており、それが主に旧宮家養子案の中での文脈だったからです。
また、この措置(旧宮家養子案)については、養子が皇統の紊乱を防ぐ等のために皇室典範で認められてこなかったことを重く受け止め、皇族数の確保の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、一定年数ごとに見直すものとする。
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応」に関する衆参正副議長による議論のとりまとめ(6月10日、衆議院、PDF)
このように「立法府の総意」取りまとめでは「一定年数ごとに見直す」と書かれ、これを「30年ごと」と具体化したのが今回の要綱であることが分かります。
なぜ見直し規定が立てられたのか?
① 養子は本来、皇室典範が禁じてきた制度だから
養子案は、皇室典範上きわめて例外的な制度であると言えます。そもそも現行皇室典範のみならず、明治時代の旧皇室典範の時から天皇・皇族の養子は禁じられてきました。
その理由は「皇統の紊乱を防ぐため」でした。
紊乱とは「秩序が乱れること」という意味です。
養子とは、血縁上の親子関係とは別に、法律上の親子関係を作る制度です。一般の家であれば、それによって家族関係や相続関係を整理することができます。
しかし皇室の場合、身分や皇位継承は、単なる家族関係ではなく、国家の制度そのものに直結しています。もし養子縁組によって皇族身分や皇位継承資格が自由に動くなら、天皇の地位が人為的に操作されるように見えてしまうおそれがあります。
だからこそ、皇室典範はこれまで皇族の養子を認めてきませんでした。
② 今回の養子案は、その禁止に対する例外だから
今回の旧宮家養子案は、その禁止を完全に取り払うものではありません。
旧11宮家の皇族男子の子孫である男系男子に対象を限定し、養親となる皇族の範囲や、養子となる者の年齢、配偶者と子の有無、皇室会議の関与など、いくつもの条件を設けたうえで、あくまで例外規定として認めるものです。
この制度は、皇族数の減少という現実に迫っている事態に対応するため、皇統に属する男系男子を皇族として迎える、きわめて限定された例外制度です。
そのため「皇統の紊乱」という状況が起きることはないか、慎重を期するため30年ごとに見直しを行うこととしたのでしょう。
③ 実際に制度が機能するかは短期では分からないから
旧宮家養子案が、制度として実際にどのように機能するかは長期目線で慎重に見なければなりません。
・実際に養子となる方が現れるのか、何人が養子縁組されるのか
・どの皇族の養子となるのか(誰が養親になるのか)
・皇族として定着できるのか
・国民に今後どう受け止められるのか
・皇族数の確保につながるのか
・養子となった皇族に配偶者が現れるのか、子を儲けられるのか
・養子の子孫が、制度上想定された通りに皇族数確保(または安定的皇位継承)へつながっているのか
これらは、数年で結論が出る問題ではありません。
皇室制度は、選挙や政権交代のように短い周期で評価できるものではありません。養子制度の効果を見るには、少なくとも1世代分の時間が必要です。それが今回「30年ごと」とした理由でしょう。
まとめ
たとえば、15歳・未婚・子なしで旧宮家男系男子が皇室に養子入りした場合、30年後には45歳になっています。
その時点で、皇族として定着できたか婚姻したか、子が生まれたか、その子孫が皇族数確保に寄与しているかが、ある程度見えているはずです。
つまり30年ごとの見直しとは、単なる制度構築の先送りではなく、養子制度が1世代を経て実際に機能したのかを確認する、いわば制度の「答え合わせ」の期間であると言えるでしょう。


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