9月18日、共同通信と読売新聞の報道により、
宮内庁が、旧宮家と現皇族の養子縁組が成立した場合の新儀式を検討していることが分かりました。

改正皇室典範で可能となる「旧11宮家の男系男子の養子縁組」を巡り、縁組が成立し、養子が皇族となったことを内外に示す新たな儀式の実施を宮内庁が検討していることが18日、関係者への取材で分かった。
今回の報道で明らかになっている「新儀式」のかたちは以下の2点のみ。
- 養子が皇族となったことを内外に示す
- 「結婚の儀」などを参考にする
今回は、現時点で報じられているこの2点をもとに、その新儀式がどのようなものになるのか予想してみます。
1 結婚の儀はどんな儀式か
まずは参考にするという「結婚の儀」はどのような儀式なのか見ていきます。
皇族男子の結婚
宮内庁用語によると結婚の儀は「お二方が、賢所において結婚の誓いをされる儀式」とされています。
ただ、皇族の結婚は「結婚の儀」だけで完結するものではなく、このほか
納采、朝見の儀、宮中饗宴の儀など複数の儀式で構成されるので、「結婚の儀」だけを参考にするわけではないと思います。
報道でも「『結婚の儀』などを参考に、一連の儀式の在り方を決める方針」とあり、養子にかかわる儀式もこの結婚の儀式の流れを参考にするのではないでしょうか。
国事行為たる儀式かどうか
男子皇族の結婚には直近の前例としては2例あります。
文仁親王殿下・紀子妃殿下:平成2年(1990)6月29日(現在の秋篠宮皇嗣殿下・紀子皇嗣妃殿下)
皇太子徳仁親王殿下・雅子妃殿下:平成5年(1993)6月9日(現在の天皇皇后両陛下)
両者とも儀式の流れは大筋で同じですが、皇太子殿下のご結婚は一部の儀式を「天皇の国事行為たる儀式」として行われた点で文仁親王殿下と異なります。
文仁親王殿下のご結婚の流れ
皇室会議 → 納采の儀 → 告期の儀 → 結婚の儀 → 朝見の儀 → 供膳の儀・三箇夜餅の儀 → 祝宴の儀 → 茶会の儀 → ご祝宴・茶会 → 神宮・山陵への奉告参拝など
0:40から結婚の儀(賢所) 1:10から朝見の儀(宮殿・松の間)
皇太子殿下のご結婚の流れ
皇室会議 → 納采の儀 → 告期の儀 → 結婚の儀 → 朝見の儀 → 供膳の儀 → 三箇夜餅の儀 → 宮中饗宴の儀 → 神宮・山陵への奉告参拝など
具体的には、皇太子殿下のご結婚は、結婚の儀・朝見の儀・宮中饗宴の儀の3つが国事行為として行われました。
4:35 朝見の儀 具体的なお言葉まで聞くことができます。
結婚の儀・朝見の儀・宮中饗宴の儀
結婚の儀 お二方が、賢所において結婚の誓いをされる儀式
朝見の儀 立太子、ご結婚などに際し、天皇・皇后にごあいさつをされる儀式
宮中饗宴の儀 ご即位、立太子、ご結婚などを披露され、祝福を受けられる祝宴
2 では養子の儀式はどうなるのか?
旧宮家養子縁組と男子皇族の結婚は、
・養子縁組 → 皇族でない男子が現皇族との養子縁組により皇族となる
・結婚 → 皇族でない女子が現皇族との婚姻により皇族となる
と、「いずれも非皇族の皇室入り」という点で共通しています。
なので新儀式は、結婚の儀式の「皇室入りを公に位置づける儀式」という要素が最も参考にされるのではないでしょうか。
なので予想としては、
① 皇室会議
② 皇室典範にもとづき、養子縁組が成立・皇族となる
③ 宮中賢所に養子皇族となったことを奉告する儀式
④ 朝見の儀(両陛下へのご挨拶)
⑤ 養子皇族となったことを「内外に示す」新儀式
⑥ 祝宴の儀
⑦ 神宮・山陵への奉告
あたりが一番自然に見えます。
3 「内外に示す」儀式は特に重要な儀式
特に一連の儀式では、
⑤ 養子皇族となったことを「内外に示す」新儀式
が中核をなすと思われます。内外とは「国内と国外」という意味です。
この「内外」という文言が見える既存の儀式はいずれも「天皇の宣明」があるという点で特に重要です。
次の3種類が挙げられます。
| 儀式 | 宮内庁による説明 |
|---|---|
| 即位礼正殿の儀 | 「即位を公に宣明されるとともに、その即位を内外の代表がことほぐ儀式」 |
| 立太子宣明の儀 | 「皇太子であることを公に宣明されるとともに、これを内外の代表が祝われる儀式」 |
| 立皇嗣宣明の儀 | 「文仁親王が皇嗣となられたことを公に宣明されるとともに、これを内外の代表がことほぐ儀式」 |
もしもこの「内外に示す儀式」という報道が共同通信の解釈ではなく宮内庁がそのまま伝えたものであれば、養子皇族の儀式はこの3つの儀式にならぶこととなり、それだけに重要性がうかがえます。
4 養子皇族男子は「王」になる
改正皇室典範によると、養子皇族男子はその養子縁組の時から皇族となり、その身位は「王」です。
王は天皇の3世孫(曾孫)以下の男系男子に授けられる身位です。
なお、令和8年9月現在の皇室には王は1方もおられません。
新儀式について求められることは「養子縁組を行ったこと」以上に「皇族となり、王となったこと」を公に示すことが最も重要ではないかと思います。
かつての「親王宣下」とどう関わるか
歴史的な前例のうち、新儀式と近い位置付けになりそうなのが、明治19年(1886)まで行われていた「親王宣下」です。
親王宣下は、ある特定の皇族を「親王である」と天皇が宣旨(天皇の命令)を下すことです。
明治の皇室典範以来、親王や王などの身位は出生時点で自動的に付与されることから親王宣下の実用的な意味が失われ、行われなくなりました(ただし、親王宣下の廃止に反対の意見もあった(井上毅意見書))。
旧皇室典範における男系男子による皇位継承制と永世皇族制の確立(国立国会図書館、PDF)
また同じく明治典範以来、皇族の範囲を世数でしばらない「永世皇族制」となったため、親王より下の世代の皇族男子はその世数にかかわりなく「王」が自動的に付与されることとなりました。
今回の養子による皇族入りも皇室典範により、その縁組時点で自動的に王となるものです。
しかし、旧宮家からの養子皇族男子が「皇族数確保」ないし「安定的な皇位継承」の役割を果たされる重みを考えると、公の儀式で「王」であることを内外に宣言されることは非常に意義のあることです。
その場合、伝統としてどこまで親王宣下に合わせるのか、装束は身に付けるのか、儀式の名称はどうなるのか、その流れは…など気になる点が多いですね。
まとめ 早期の縁組を祈ります
改正皇室典範の施行はおよそ1ヶ月後の10月24日。
共同の報道では
「宮内庁は養子縁組について『当事者の自由な意思が尊重されなければならない』とし、対象者の把握を慎重に進めている」
とあるように、現在政府・宮内庁のもと、水面下で意思確認が行われているようです。
旧宮家養子縁組制度はその実効性を疑問視する声もありますが、自身も旧宮家の男系子孫である竹田恒泰さんは平成24年(2012)1月にTwitter(当時)で次のように発信しています。
さらにその後の3月1日の『正論』4月号には、
「皇位継承問題について旧皇族20人以上と意見交換。大多数が男系の皇統は維持されるべきだと考えており、女性・女系天皇を積極的に容認する人はいなかった。男系維持のため皇籍復帰を要請されれば、「一族として要望に応える覚悟を決めておかなければならない」と考える人が大半を占めたという」
とあります。

2012年のことなので、今から14年前のことではあります。
ですが裏返せば、14年も前から旧宮家の一族内ではこの事が具体的に話し合われ、しかも男系による皇位継承と一族からの養子が肯定的に受け止められてきたことも分かります。
今回の「新儀式」の検討も、縁組成立後の具体的な動きを設計するものですから、1個人の「希望的観測」ということは承知の上ですが、もしかしたら縁組は意外と早く実現するのかもしれません。

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