【反論】「愛子天皇」が不可能な理由【『女性自身』蓮舫氏】

感想、反論

今回は、『女性自身』2026/08/03掲載記事、「『愛子さまを天皇に』蓮舫氏が訴える“長子優先”…皇位継承の見直し余地を残した改正法案の“4文字”」について反論を書いていきたいと思います。

蓮舫氏は、現在、立憲民主党の参議院議員(58)です。

0 蓮舫氏の主な主張

  • 女性天皇・女系天皇への国民の理解と支持は急速に広がっている。
  • 麻生太郎氏が養子案の議論を主導したことには問題がある
  • 女性天皇・女系天皇を認めるべきである。
  • 愛子内親王殿下が今上陛下の後を継ぐのが国民の総意である。
  • 今回の改正で愛子天皇への道が完全に閉ざされたわけではない。

1 愛子天皇は事実上不可能

蓮舫氏への反論としてはまず第一に、「愛子天皇の実現は事実上不可能である」というところです。
「事実上」というのは、皇室典範の第3条では心身の重患や重大な事故などの場合、皇室会議の議決により皇嗣(次の天皇としての地位)を変えることができると規定されているためです。
その意味では、皇嗣が今後変わることは可能性としてはゼロではないでしょう。

しかし皇嗣殿下の継承順位変更は、ただ単に皇室典範3条を適用させれば済むという単純なものではありません。

立皇嗣宣明がすでに行われている

令和2年(2020)11月8日に、秋篠宮文仁親王殿下を皇嗣であると内外に明らかにする儀式「立皇嗣の礼」が執り行われました。その中の「立皇嗣宣明の儀」で、天皇陛下は次のお言葉を宣明しました。

本日ここに,立皇嗣宣明の儀を行い,皇室典範の定めるところにより文仁親王が皇嗣であることを,広く内外に宣明します。

立皇嗣宣明の儀の天皇陛下のおことば(令和2年11月8日、宮内庁)

よって、今の段階で皇嗣殿下の継承順位を移動させるには、陛下の立皇嗣宣明を覆す必要があります

国家の儀式として、陛下が行われた宣明を覆すことは、陛下の権威と国家の信用に計り知れないダメージを残すことになるでしょう。

蓮舫氏は愛子天皇を実現すると言うのなら、まずこの点から目を逸らさず「立皇嗣宣明の事実についてどうするのか」。これに正面から向き合うべきだと思います。

「異議なし」「全会一致」の賀詞奉呈の事実

衆議院では令和2年10月28日、「立皇嗣の礼に当たり賀詞奉呈の件」が本会議にかけられました。
大島理森議長が、天皇陛下と皇嗣殿下に賀詞を奉呈することを提案すると、「異議なし」で決定され、その後「総員起立」のうえ賀詞が朗読されました。

賀詞は、天皇陛下が秋篠宮殿下について「皇嗣となられたことを公に宣明」されることを、衆議院が「国民を代表して」慶祝する内容でした。

第203回国会 本会議 第2号(令和2年10月28日(水曜日))(衆議院)

参議院でも賀詞の奉呈が全会一致により決定されています。
その内容は、立皇嗣の礼を「慶賀に堪えない」とし、皇嗣殿下に対しては今後ますます「内外の信望にこたえられますよう」祈るとして、参議院が国民を代表して慶祝する内容でした。

1 第203回国会概観(参議院、PDF)

蓮舫氏は立憲民主党所属であるため、当然これに関わっています。そこまで現在の皇位継承秩序を変更したいのであれば、蓮舫氏はまず自党と国会が立皇嗣の礼に際して行った賀詞奉呈をどう総括するのかを明らかにするべきではないでしょうか。

以上が、愛子天皇は事実上不可能とする理由です。


2 「禍根」とは何なのか

記事から引用 蓮舫氏の発言

「さらに、麻生太郎さんの妹である信子さまが養親になる可能性があるにもかかわらず、麻生さんが議論をリードしたことは禍根を残すことになると思います」

これについて、蓮舫氏は具体的に何が理由で禍根を残すこととなるのか因果関係を明らかにしていません。
おそらく、信子妃殿下が養親になった場合、麻生太郎氏が外戚となり皇位継承に影響を及ぼす可能性があると言いたいのかと思いますが(実際、麻生氏が「藤原道長になる」といった言説がある)、これはかなり無理のある主張です。

養子皇族男子は継承資格なし、子孫男子は実方系統による継承

まず重大な指摘として、
・改正皇室典範38条により養子となった旧宮家男系男子(養子皇族男子)は皇位継承資格を持ちません。
・また同条により、皇位継承資格を持つのは、養子皇族男子の子の世代からになります。
・そして、養子皇族男子の子の皇位継承資格の根拠は、養親の系統ではなく、実親の系統、つまり「旧宮家の系統」によることとされています。

●皇室典範等の一部を改正する法律案(衆議院)

つまり、麻生家の血統が皇位継承順位を押し上げる仕組みではありません。
麻生氏が自分の親族に皇位継承資格を与える制度を作った」と言いたいのであれば、それは正確ではないと言えます。

麻生氏は現在すでに85歳

さらに、麻生氏の年齢からしても、養子子孫の皇位継承に影響を及ぼすのは非現実的と分かります。
令和8年(2026)8月現在、麻生氏は85歳です。

仮に、今上陛下が80歳前後になる令和22年(2040)ごろに上皇陛下と同じく譲位をしたとして、その時点で麻生氏は100歳前後になります。
その後、皇嗣殿下→悠仁親王殿下と皇位が継承され、その次の世代にもしも旧宮家系統の天皇が即位することになったとしても、平均寿命から考えて麻生氏がその時点で存命している可能性は極めて低いでしょう。

そもそも麻生家はもう45年以上も「皇室の縁戚」

年月主な出来事麻生太郎氏信子妃殿下寬仁親王殿下
昭和54年(1979)10月麻生氏、衆議院議員に初当選39歳24歳33歳
昭和55年(1980)11月7日寬仁親王殿下と信子妃殿下がご結婚40歳25歳34歳
昭和56年(1981)12月20日彬子女王殿下ご誕生41歳26歳35歳
昭和58年(1983)10月25日瑶子女王殿下ご誕生43歳28歳37歳
昭和63年(1988)12月麻生氏、文部政務次官に就任48歳33歳42歳
平成2年(1990)3月麻生氏、自民党文教部会長に就任49歳34歳44歳
平成3年(1991)1月麻生氏、衆院石炭対策特別委員長に就任50歳35歳45歳
平成3年(1991)11月麻生氏、衆議院外務委員長に就任51歳36歳45歳
平成4年(1992)12月麻生氏、自民党外交部会長に就任52歳37歳46歳
平成5年(1993)8月麻生氏、自民党副幹事長に就任52歳38歳47歳
平成8年(1996)11月麻生氏、経済企画庁長官として初入閣56歳41歳50歳
平成13年(2001)1月麻生氏、経済財政政策担当相に就任60歳45歳55歳
平成15年(2003)9月麻生氏、総務大臣に就任63歳48歳57歳
平成17年(2005)10月麻生氏、外務大臣に就任65歳50歳59歳
平成20年(2008)9月24日麻生氏、第92代内閣総理大臣に就任68歳53歳62歳
平成24年(2012)6月6日寬仁親王殿下薨去71歳57歳66歳
令和8年(2026)8月現在85歳71歳

麻生氏の妹である信子妃殿下は故・寬仁親王の妃です。
妃殿下が寬仁親王と結婚されたのは昭和55年(1980)11月7日ですから、この日から現在に至るまで、麻生家は45年以上も皇室の縁戚です。

もともと45年以上も縁戚だったのに、なぜ今この時になって麻生氏が「禍根になる」と批判されるのかは謎です。

寬仁親王がご存命の時には、当然ながら信子妃殿下との間に男子が生まれる可能性もあったわけです。しかし、さかのぼって探しても「麻生太郎氏が外戚となって皇位継承を操る」というような批判は見つかりませんでした。

当時、とりわけ、信子妃殿下と寬仁親王殿下との間に男子が生まれ得た時期と、麻生氏が自民党内で影響力を増していった1990年代は重なっています。
現在よりもはるかに直接的に「外戚」になり得るはずでしたが、そういった批判は見当たりません。

以上から、信子妃殿下が養親となった場合、その兄である麻生太郎氏の関係で「禍根を残す」というのはかなり粗雑な「印象論であり、改正皇室典範の設計や、過去から将来にわたる時系列を無視したものです。


3 附帯決議の「適時適切」は愛子天皇のために書かれたものではない

記事から引用 蓮舫氏の発言

(改正皇室典範には)附帯決議のある文言を勝ち取っています。皇室典範の見直し時期を『30年ごと』としていた法案に『適時適切』に見直すと読めるように記す約束を取り付けたのです」

30年見直さなくなってしまうところを、この4文字で改正の余地が生まれたという。

今年の10月24日に施行が予定されている改正皇室典範には、附帯決議が盛り込まれています。蓮舫氏は、附帯決議の文言を根拠に皇室典範の再改正、具体的には愛子天皇を実現させるための改正の余地が生まれたとしています。

法律案を可決するときに、国会の委員会が政府などに対して付ける「注文書」のようなものです。たとえば「この法律を実施するにあたって、こういう点に配慮せよ」「今後この課題を検討せよ」という内容です。
附帯決議そのものには法的拘束力はありませんが、国会の委員会で正式に議決されるので、政府に対する圧力・要請になるため、決して軽いものではありません。

 皇室典範等の一部を改正する法律附則第六条第一項の規定に基づいて改正後の皇室典範等の施行状況を踏まえるに当たっては、皇族の方々を取り巻く環境その他皇室の状況についても勘案し、必要があると認められるときは、適時適切な措置が講ぜられるものとする。

 皇室典範等の一部を改正する法律附則第六条第二項の規定に基づいて三十年ごとに見直しを行うに当たっては、改正後の皇室典範第三十八条に定める養子皇族男子の方々を取り巻く環境その他の皇室の状況等について勘案し、必要があると認められるときは、所要の措置が講ぜられるものとする。

 改正後の皇室典範等による皇族数の確保の状況等を踏まえ、安定的な皇位継承を確保するための方策について、引き続き、検討するものとする。

右決議する。

皇室典範等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(参議院、PDF)

むしろ根拠にすべきは附帯決議の第3項ではないのか

第1項には、改正皇室典範等の施行状況を踏まえて、必要に応じて「適時適切な措置」を講ずることとしています。しかし、同じ附帯決議の第3項には「安定的な皇位継承を確保するための方策は引き続き検討する」と書かれています。

なぜ「愛子天皇」、「直系長子」を唱える蓮舫氏はこの第3項を根拠にしなかったのでしょうか?

第1項は自然に読めば、「今回新設された制度の運用に伴って生じる、皇族方の生活・活動・身分・周辺環境などを幅広く考慮するための見直し条項」と見るべきであり、必ずしも皇位継承を念頭に置いたものとは読めません。

立法府の総意「悠仁親王殿下までの継承をゆるがせにしてはならない」

附帯決議の第3項で、皇位継承についての検討は引き続き行われることとなりました。
しかし、この附帯決議に基づいて、愛子天皇が検討されることはありません。

国会が、大前提として「今上陛下→秋篠宮皇嗣殿下→悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」ことを立法府の総意として確認しているからです。

1 今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないことについては、立法府としてもこれを確認する。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応」に関する衆参正副議長による議論のとりまとめ(衆議院、PDF)

よって、今後皇位継承議論が行われるとしても、それは悠仁親王殿下以後の議論であり、皇嗣殿下の地位をゆるがせて愛子天皇を実現するような制度変更が検討されることはないでしょう。


まとめ

蓮舫氏の主張についての反論をまとめると次の通りです。

1 すでに行われた立皇嗣宣明の事実をどう扱うのか
2 蓮舫氏自身も関わっていた「賀詞奉呈」の事実をどう扱うのか
3 「禍根」とは具体的に何なのか
4 麻生太郎氏が外戚として権勢を奮うことは困難
5 「悠仁親王殿下までの継承をゆるがせにしてはならない」は立法府の総意

以上です。

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